こんにちは。兵庫県神戸市中央区の歯医者 シニア歯科オーラルケアクリニック新神戸 歯科医師 院長の小松原秀紀です。
神戸市は、美味しい食事や豊かな文化を楽しむことができる素晴らしい街です。しかし、歯を失ってしまい、その楽しみを十分に味わえなくなってしまったというご相談を、当院では日々数多く頂戴します。失った歯を取り戻すための「インプラント治療」は、入れ歯やブリッジにはない、天然歯に近い噛み心地と見た目を回復できる画期的な治療法です。しかし、一方で「手術が怖い」「どのくらいの期間がかかるのか見通しが立たない」「具体的な手順が分からなくて不安」といったお声もよく耳にします。
インプラント治療は、虫歯の治療のように1回や2回で終わるものではありません。数ヶ月単位の期間を要し、外科手術を含む複数のステップを積み重ねていく、精密なプロジェクトのようなものです。だからこそ、治療を始める前に「全体像(ロードマップ)」を正しく理解しておくことが、不安を解消し、安心して治療に臨むための最大の鍵となります。特に、当院に通われるシニア世代の患者様にとっては、お体への負担やスケジュールの管理も重要な要素です。今回は、神戸市でインプラント治療をご検討中の皆様に向けて、初診の相談から治療完了、そしてその後のメンテナンスに至るまでの「6つの手順」を、順を追って詳しく、分かりやすく解説していきます。
目次
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手順1:カウンセリングと精密検査(CT撮影)|安全な計画の立案
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手順2:前処置(歯周病治療・口腔内清掃)|成功率を高める土台作り
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手順3:一次手術(インプラント埋入)|痛みに配慮した外科処置
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手順4:治癒期間(オッセオインテグレーション)|骨と結合する大切な待ち時間
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手順5:二次手術と仮歯の装着|歯茎の形成と噛み合わせのリハビリ
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手順6:最終的な人工歯の装着とメンテナンス|一生モノにするためのスタート
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まとめ
1. 手順1:カウンセリングと精密検査(CT撮影)|安全な計画の立案
インプラント治療の第一歩は、患者様のお悩みやご希望をじっくりとお伺いする「カウンセリング」と、お口や全身の状態を把握する「精密検査」から始まります。ここは、治療の設計図を描くための最も重要なフェーズです。
まずカウンセリングでは、「なぜ歯を失ったのか」「どのような生活を送りたいか」「予算や期間の希望」などを詳しくヒアリングします。インプラントは魔法の杖ではありません。メリットだけでなく、外科手術のリスクや費用、治療期間といったデメリットについても、包み隠さずご説明し、患者様にご納得いただく(インフォームドコンセント)ことが何よりも大切です。
続いて精密検査を行います。ここでは、従来のレントゲンだけでなく、「歯科用CT」による三次元的な撮影が不可欠です。顎の骨の「厚み・高さ・奥行き」や、骨の中を通る神経・血管の位置を正確に把握しなければ、安全な手術は行えません。特に神戸市中央区という土地柄、当院には多くのシニア世代の患者様がいらっしゃいますので、骨の状態だけでなく、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症といった「全身疾患」の有無や、服用されているお薬(特に出血を止まりにくくする薬や骨のお薬など)の確認も徹底して行います。必要であれば、内科などの主治医と連携(対診)を取り、手術が可能かどうかを慎重に判断します。この段階で、綿密なシミュレーションを行い、治療費の総額やスケジュールの目安を提示します。
2. 手順2:前処置(歯周病治療・口腔内清掃)|成功率を高める土台作り
「検査が終わったら、すぐに手術!」と思われている方も多いのですが、実はそうではありません。インプラントを埋め込む前に、お口の中の環境を整える「前処置」が非常に重要になります。これは、家を建てる前の「地盤改良」のようなものです。
もし、お口の中に歯周病菌がたくさんいる状態(歯周病が進行している状態)で手術を行うとどうなるでしょうか。手術した傷口から細菌が入り込み、インプラントが骨と結合しなかったり、術後の治癒が遅れたりするリスクが格段に高まります。また、残っている他の歯に虫歯があれば、それも感染源となります。そのため、手術の前には必ず、歯科衛生士による徹底的なクリーニング(歯石除去)や、必要な虫歯・歯周病治療を行い、お口の中の細菌数を減らして清潔な状態にします。
この期間は、患者様ご自身に「正しい歯磨きの方法」を習得していただく期間でもあります。インプラントは天然歯よりも細菌感染に弱いため、治療後のセルフケアが寿命を左右します。手術前に歯磨きの習慣を整えておくことは、将来のインプラントを守るためのトレーニングでもあるのです。地味な工程に見えますが、この前処置を丁寧に行うかどうかが、インプラントの長期的な成功率(生存率)を大きく分けることになります。
3. 手順3:一次手術(インプラント埋入)|痛みに配慮した外科処置
お口の環境が整ったら、いよいよインプラント(人工歯根)を顎の骨に埋め込む「一次手術」を行います。手術と聞くと「怖い」「痛そう」と身構えてしまう方も多いですが、実際には親知らずを抜く処置と同程度、あるいはそれよりも身体的負担が少ないケースも多くあります。
手術は、局所麻酔を十分に効かせた状態で行いますので、術中に痛みを感じることはほとんどありません。まず歯茎を切開し、顎の骨に専用のドリルで穴を開け、チタン製のインプラント体を埋め込みます。その後、歯茎を縫合して終了です。手術時間は、埋入する本数や骨の状態にもよりますが、1本あたり30分から1時間程度で終わることが一般的です。骨が少ない場合に骨を増やす処置(骨造成)を同時に行う場合は、もう少し時間がかかります。
当院では、手術中の緊張や不安を和らげるために、脈拍や血圧を監視するモニターを使用し、全身管理を行いながら進めます。また、手術に対する恐怖心が強い方には、点滴から鎮静薬を入れてうたた寝のような状態でリラックスして手術を受けられる「静脈内鎮静法」などのオプションを提案することもあります。術後は、麻酔が切れると多少の痛みや腫れが出ることがありますが、処方する痛み止めや抗生物質を服用していただくことで、数日で落ち着いてきます。翌日からは、激しい運動などを控えていただければ、デスクワークなどの日常生活に戻ることが可能です。
4. 手順4:治癒期間(オッセオインテグレーション)|骨と結合する大切な待ち時間
一次手術が終わったら、すぐに歯が入るわけではありません。ここから、インプラントと顎の骨がしっかりと結合するのを待つ「治癒期間」に入ります。この結合のことを専門用語で「オッセオインテグレーション」と呼びます。インプラント治療において、最も時間がかかるのがこのステップです。
チタンという金属は、生体親和性が高く、骨と直接結合する性質を持っています。しかし、接着剤でくっつけるわけではないので、生物学的に結合するまでには一定の時間が必要です。一般的には、骨が比較的硬い「下顎」で2ヶ月から3ヶ月、骨が柔らかい「上顎」で3ヶ月から6ヶ月程度の期間がかかります。骨造成を行った場合は、骨が成熟するまでさらに数ヶ月待つこともあります。
この期間中、患者様は基本的に普段通りの生活を送っていただけますが、埋入したインプラントに過度な力がかからないように注意する必要があります。見た目が気になる前歯などの場合は、手術直後から仮歯を入れたり、仮の入れ歯を使用したりして、歯がない期間を作らないように配慮します。「待つ」という時間は長く感じるかもしれませんが、ここで焦らずしっかりと骨と結合させることが、インプラントが一生涯機能するための強固な土台となります。定期的にご来院いただき、消毒や経過観察を行いながら、結合の状態を確認していきます。
5. 手順5:二次手術と仮歯の装着|歯茎の形成と噛み合わせのリハビリ
インプラントと骨が完全に結合したことが確認できたら、「二次手術」を行います(※一度の手術で完了する「一回法」という術式の場合は、この工程は不要です)。二次手術は、歯茎の下に埋まっているインプラントの頭出しをするための、ごく小規模な処置です。歯茎を少しだけ切開し、インプラント体に「アバットメント」と呼ばれる土台(連結装置)を取り付けます。この処置は短時間で終わり、痛みも一次手術よりさらに少ないことがほとんどです。
その後、歯茎の治癒を待ってから型取りを行い、「仮歯(プロビジョナルレストレーション)」を作製して装着します。いきなり最終的なセラミックの歯を入れるのではなく、まずはプラスチック製の仮歯を使って、「リハビリ期間」を設けるのです。 この仮歯の期間には、重要な役割が3つあります。 1つ目は「噛み合わせの確認」です。長期間歯がなかった場所で急に噛めるようになると、舌や頬の筋肉、噛み合わせのバランスに違和感が出ることがあります。仮歯を使って実際に食事をしていただきながら、噛み心地を微調整していきます。 2つ目は「歯茎の形成」です。インプラントの周りの歯茎が、天然の歯のように自然で美しい形になるように、仮歯の形を調整して歯茎を誘導します。 3つ目は「清掃性の確認」です。ご自身でしっかりと歯磨きができる形になっているかを確認し、練習していただきます。 このプロセスを経ることで、見た目も機能も、そしてメンテナンスのしやすさも兼ね備えた、最終的な歯を作る準備が整います。
6. 手順6:最終的な人工歯の装着とメンテナンス|一生モノにするためのスタート
仮歯で噛み合わせや歯茎の状態が安定したら、いよいよ最終的な仕上げに入ります。精密な型取りを行い、歯科技工士が患者様のお口に合わせた「最終的な人工歯(上部構造)」を作製します。材質は、強度と審美性に優れたジルコニアやセラミックなどが主流です。色や形も、周りの天然歯と見分けがつかないほど自然に仕上げることができます。
完成した人工歯をインプラントに装着し、噛み合わせの最終チェックを行って、治療は完了となります。しかし、ここで終わりではありません。むしろ、ここからがインプラントを「一生モノ」にするための本当のスタートです。 インプラントは人工物なので虫歯にはなりませんが、歯周病にはなります。これを「インプラント周囲炎」と言います。天然歯よりも細菌に対する防御力が弱いため、ケアを怠ると急速に骨が溶け、インプラントが抜け落ちてしまうリスクがあります。
これを防ぐために、ご自宅での毎日の丁寧なセルフケアに加え、歯科医院での「定期メンテナンス」が絶対に不可欠です。通常は3ヶ月から半年に1回のペースでご来院いただき、噛み合わせのチェック、ネジの緩みの確認、そして専用の器具を使ったプロフェッショナルクリーニングを行います。定期検診に通っていただくことは、多くの歯科医院でインプラントの保証条件にもなっています。手間や費用(メンテナンス代)はかかりますが、高額な治療費をかけて手に入れた「噛める喜び」を一生涯守るための、必要経費と考えていただければと思います。
まとめ
神戸市でインプラント治療を受ける際の流れについて、6つの手順で解説しました。
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カウンセリング・検査:CTや全身状態の確認で安全な計画を立てる。
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前処置:お口の中を清潔にし、手術の成功率を高める。
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一次手術:痛みに配慮し、インプラントを骨に埋め込む。
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治癒期間:数ヶ月かけて、インプラントと骨の結合を待つ。
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二次手術・仮歯:歯茎を整え、噛む機能のリハビリを行う。
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最終装着・メンテナンス:美しい歯を入れ、定期ケアで守り続ける。
インプラント治療は、長い期間と多くのステップを要する治療ですが、その一つひとつに重要な意味があります。流れを理解し、焦らず治療に取り組むことが、最高の結果につながります。 シニア歯科オーラルケアクリニック新神戸では、シニア世代の患者様が安心して治療を受けられるよう、丁寧な説明と安全な治療体制を整えています。神戸市でインプラントをご検討中の方は、まずは一度、当院のカウンセリングにお越しください。あなたの人生を豊かにする「歯」を取り戻すために、私たちが全力で伴走いたします。

